第17回決勝大会レポート

2021年11月28日、第17回出版甲子園決勝大会が開幕しました。

「本を作りたい」。そんな熱い想いを抱え、3度の審査を勝ち抜いた6名の企画者たち。ここでは、彼ら彼女らの熾烈なプレゼンバトルの様子をレポートしていきたいと思います!

今大会のテーマは「0 to 1」。

この大会が本を作りたい学生たちの最初の一歩となる場であること、コロナ禍の中、2020年から2021年へと駆け抜けた年であることからこのようなテーマがつけられました。

今大会のゲストは、大ヒットを記録した田中みな実さんの写真集『Sincerely yours...』を手掛けた編集者・プロデューサーの小寺智子さん。各プレゼンのあと、45分にわたるトークショーを行っていただきました。

また、今大会は、新たな試みとして決勝大会進出企画の中の上位2企画の企画者による最終決戦が行われました。内容につきましては、レポートの後半にて詳しくお伝えします。

それではまず、6名の企画者の皆さんのプレゼンの様子からレポートしていきたいと思います!

プレゼン時間は6分。その後、編集者、書店員からなる総勢23名の審査員による質疑応答が行われます。

学生とプロフェッショナルの熱いぶつかり合いにも注目です!

 早速スタート!

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エントリーNo.1「通訳案内士のふか〜い引き出し 。日本事象を掘り下げる!」箕浦由莉

通訳案内士に必要なスキルとは何なのか?ーーーそれは日本の古典を知ること。

プロの英語観光ガイドとして活動中の箕浦さんが編み出した、外国人観光客に日本の素晴らしさを真に伝えられる通訳案内士になるためのガイドブックの企画でした。実際の例を用いたプレゼンはかなりの説得力がありましたね…!

「あまり読者層の広くない企画だがどう売っていくのか」という鋭い質問にも、実際の数字を挙げ、スラスラ答えていた姿が印象的でした。

エントリーNo.2「京大医学部女子と診る!フィールドワーカー解体新書」木谷百花・菊池恭平

フィールドワーカーとは、現地での経験に重きを置いて調査を行う研究者のこと。

インタビューを通して世界中で活動するフィールドワーカーを「解剖」し、読者が遠くの他者との出会いを追体験できるというコンセプトの本企画は、人とのつながりが希薄になってきた現在の状況を踏まえたもので、とても魅力的でした!

「フィールドワーカーたちの著作ではなく本書を読むメリットは?」という質問には、「実際にインタビューを通して新たに得られたものがある」と自信を持って語ってくれました。

エントリーNo.3「ロボットをつくりたいキミのための「ロボット屋さん」図鑑」古澤美典

ロボットを作るのはエンジニアだけではありません!

ロボットに関わる様々な分野・職業を紹介し、「ロボット屋さん」になりたい子どもたちにさらなる可能性を届けることを目指した企画でした。古澤さんのロボット愛にあふれた、とてもワクワクするプレゼンでした!

 「どのように構成していくのか」という質問には、内容はもちろん、手に取りやすさを意識した回答をしていた姿が印象的でした。

エントリーNo.4「全ての悩みを打ち払う本。虐げられた人々が生んだHIPHOP流自己肯定術」宮田峻輔

HIPHOP×メンタルヘルス⁉

「HIPHOPの自己肯定術を方法論化し、過去のトラウマの克服や自己肯定感upを可能にする」というオリジナルのメンタルヘルス法を構築した本企画。確かな知識に基づいた、興味深い内容でした!

「ラッパーではなく自分が書く、という著者性はどう考えているか」という質問には、学術性、客観性の強みを力強く語ってくれました。

エントリーNo.5「発達障害⁉どーんとこい!!ー元療育士から、しんどいママ・パパへのラブレター」大門彩香

わが子の障害を受け入れられない気持ちを恥じる必要はありません。

実際に療育士として250名ほどの発達障害児とその保護者に関わってきた大門さん。障害受容の難しさを社会の障害への認識とからめ、保護者はもちろん社会の障害への間違ったイメージを払拭していきたいと熱く語ってくれました!

「類書との差別化をどのように図っていくか」という質問には、たくさん出版されている体験談とは違い、保護者のケアにフォーカスしたという独自性を丁寧に説明していました。

エントリーNo.6「呪いを、科学する。この怪異、あなたは紐解けますか!?」中川朝子

呪いと呼ばれる事象には「理由」がある!

呪い(オカルト)と科学を組み合わせ、より科学に親しんでもらいたいというコンセプトの本企画。実際に科学的に解明されている呪いの例を示しながらプレゼンしてくれましたが、もうこの時点で興味津々です!

「本のジャンルはどのように考えているか」という質問には、エンターテイメントであることはもちろん、サイエンス好きにもアタックしたいと語ってくれました。

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さて、ここまで6名のプレゼンを見てきました。

甲乙つけがたいところなのですが…ここで最終決戦に進む上位2名の投票を行います!

最初にも言ってたけど最終決戦って何?って感じですよね。ここでサクッと説明させていただきます!

最終決戦では、審査員と視聴者の皆さまの投票により選ばれた上位2企画の企画者によるパネルディスカッションが行われます。3つの議題について議論し、より熱意があると評価された方の企画者がグランプリとなります!

さあ、投票が終わったようです。

最終決戦に進むのは――――――

エントリーNo.3「ロボットをつくりたいキミのための「ロボット屋さん」図鑑」
古澤美典さん!

エントリーNo.6「呪いを、科学する。この怪異、あなたは紐解けますか!?」中川朝子さん!

古澤さん、中川さん、おめでとうございます!!!

それでは最終決戦を見ていきましょう!

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議題1:学生が本を出版するうえで、最も大切だと思うことは?

古澤さん「文章を書くことを生業をされている方に学生が技術で打ち勝つのは難しいと思うんですよね。一方で負けない部分は熱意の部分。学生の唯一の武器なんじゃないかなと思います。」

中川さん「今回申し込んだきっかけが出版”甲子園”っていう名前の部分なんですね。私、甲子園マニアで。甲子園の魅力って上手さじゃなくて執念、1点に食らいつく執念なんですよね。この試合絶対に負けられないと思って応募しました。」

議題2:審査員質問で最も心に残った質問は?

中川さん「第11章の部分で、内容的にこの部分で「呪い」という言葉を使うのはいかがなものか、と言われたことですね。言葉選びには自信があったんですけど、この指摘で反省しまして。本を出版するにあたっては言葉に対する敬意とか熱意を忘れてはいけないなと思いました。」

古澤さん「ロボットにのめり込むきっかけになったことはなんですか、という質問がいちばん心に残っています。まさか自分のことを掘り下げてくれる質問が来るとは思っていなくて。でも確かに書いた人がどんな人かっていうことも重要な情報なんだなと思わされました。」

議題3:この本が出版されることで、どのような社会になってほしいか

古澤さん「リケジョとかロボジョっていう言葉がなくなればいいなと思います。こういう言葉がある時点で、女性にはとっつきにくいっていう共通理念があるのかなと思っていて。この本が出版されることで、子どもたちがロボット屋さんに興味を持ったと気軽に言えるようになってほしい。で、もっと言えば人が何者にでもなれる社会になってほしいですね。」

中川さん「科学に対するリスペクトを忘れない社会が訪れたらいいなと思っています。最近の社会はすぐに答えを求めがちだと思うんですが、怪異をいろいろな刃、角度から切り込んだこの本を読むことで、考える機会が創出されるといいなと思います。それが科学へのリスペクトにつながるし、そうしてみんながさまざまな自分の刃を持って物事に切り込んでいける社会になるといいなと思いますね。」

ファイナリスト2人の出版への熱い想いが垣間見える最終決戦でしたね!

果たして、グランプリはどちらの手に…とその前に、続いては小寺智子さんのトークショーの様子をお伝えします。

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ゲストの小寺智子さんには、「出版業界で働くということ」「本をつくるお仕事をするということ」について、観覧者から事前に寄せられた質問を交えながらお話いただきました。

ここでは、特に印象的だったお話をご紹介させていただきます!

Q, 編集者として大事にしていることは何ですか?

A, 本を作品ではなく商品と考えることが大切だと思います。やっぱり売れることが関わった方々が報われる唯一の形なので。世間の人がどんなものを求めているかということを考えられる製作チームを作ることが重要ですね。また、絶対妥協はしないので、著者さんが覚悟を持って一緒にやっていけるような相手なのかどうかを見極めることを大事にしています。

他にも、出版に関する真摯な思いをたくさん聞くことができました!

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いよいよ結果発表の時間がやってまいりました。

今回は、上位2企画の企画者による最終決戦をもとに、審査員の皆さんからの投票で準グランプリ、グランプリが決まります。

まずは、本日のゲストの小寺智子さんによるゲスト賞の発表です。

ゲスト賞に選ばれたのは――――――

エントリーNo.5「発達障害⁉どーんとこい!!ー元療育士から、しんどいママ・パパへのラブレター」
大門彩香さん!

続いて準グランプリの発表です。

準グランプリは――――――

エントリーNo.6「呪いを、科学する。この怪異、あなたは紐解けますか!?」中川朝子さん!!

そして栄えあるグランプリを勝ち取ったのは――――――

エントリーNo.3「ロボットをつくりたいキミのための「ロボット屋さん」図鑑」
古澤美典さん!!!

古澤さん、中川さん、大門さん、本当におめでとうございます!!!

また、惜しくも受賞は逃したものの、すばらしい企画をプレゼンしてくれた箕浦さん、木谷さん・菊池さん、宮田さんに大きな拍手をお送りください!

本を武器に世の中に伝えたいことがある全国の学生の皆さん、皆さんの熱い想いをぜひ出版甲子園を通して伝えてみませんか?

私たちは、未来の著者であるあなたをお待ちしています。

第18回出版甲子園の応募〆切は6月26日。たくさんのご応募をお待ちしています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

お読みいただきありがとうございます!

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