今泉拓氏が考えるバスケットボールのホームアドバンテージの力【行動経済学がパリ五輪を支配する#3】

 先日、男子バスケットボールの日本代表対フランス代表では、日本代表が大健闘をし大いに盛り上がりをみせました!MBA経験者が三人である日本に対し、相手は今大会の優勝候補であり、MBA選手は8人、そして平均身長が199.6cmを誇るフランスです。とても接戦であり大健闘した日本代表ですが、惜しくも、90-94の僅差で負けてしまいました。

 その中で、選手たちの素晴らしいプレーはもちろんですが、審判の不可解な判定について日本のsnsでは様々な議論がされました。

 この試合では、主に3つのジャッジが注目されました。1つ目は、第四クオーター最後の河村選手のディフェンスに対するジャッジについて。2つ目に、第四クオーター序盤、八村選手のアンスポーツマンライクファウルによる退場について。3つ目に、第二クオーターで、ビデオ判定によって判定が覆ったかと思われたが、得点はそのままの状態で試合が続行されたことについて。

 スポーツアナリストであり、行動経済学とスポーツ分析を掛け合わせた研究を行っている今泉拓氏は、ホームアドバンテージの効果について言及しました。

 今泉氏の著書「行動経済学が勝敗を支配する」では、ホームで試合する場面において、審判員が無意識に応援の影響を受けて、判定がホームチームに有利になる可能性、ホームアドバンテージというものがあると述べています。

 今回の試合では、オリンピック開催国のフランス代表と戦った日本代表。バスケットボールの会場は、他の競技に比べて観客との距離も近く、フランスを応援しているたくさんの熱狂的なサポーターもいました。応援が直に伝わりやすく、審判員も公正に判断しようとしても、応援の同調効果(※)による影響を遮断することは難しいです。

※同調効果とは、周囲の人間と同じ意見や行動だと安心し、逆に自分だけが周囲と違うと不安を感じてしまう効果のことです。

 今回の試合を例に考えてみると、第四クオーターで起こった河村選手と八村選手に対する審判は、第四クオーターということもあり、アリーナ全体が「え?フランスが?!負ける?ありえない!!絶対に勝つ!」という空気感で、フランス側の声援がより大きくなった場面でもあります。このような場面になると、審判員も同調効果の影響で、無意識にホームに有利な判定を下す可能性が高くなります。

 前回の東京五輪では、あまりこのようなホームアドバンテージを感じなかったのは、コロナ渦による無観客試合であったこと、自国開催でホームアドバンテージを受ける側であったことが要因だと考えます。

 今回のインタビューにて今泉氏は、このような応援の同調圧力による影響を受けない方法として、客観性を持つAIによる審判と柔軟な思考を持つ人間による審判の割合を変えて、役割を分担することが大切だと述べていました。そうすることで、より公正に、スムーズにスポーツを行うことができるそうです。

『行動経済学が勝敗を支配する』日本実業出版社

著者:今泉拓

東京大学大学院学際情報学府博士課程に所属。認知科学・行動経済学の研究をしている。学部時代からスポーツ分析にも取り組み、行動経済学✕スポーツで第18回出版甲子園準優勝を経験。日本実業出版社より『行動経済学が勝敗を支配する-世界的アスリートも”つい”やってしまう不合理な選択-』を出版。

発売日: 2024/06/14
ISBN:978-4534061102
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