第20回決勝大会レポート

2024年12月15日、第20回出版甲子園決勝大会が国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されました。

今回決勝大会に集結したのは、全45企画から3度の審査を勝ち抜いた7企画7名のファイナリストたち。
本記事では、厳しい審査の中で磨かれてきたファイナリストたちによる最終プレゼンの様子をお届けします!

今回の大会テーマは「本屋で見つける、あなたの名前。」

また今大会のゲストは、小説家の三浦しをんさんです。プレゼン終了後、団体員とともにトークショーを行っていただきました。

プレゼンテーションパート

まずは9名の企画者によるプレゼンの様子からお伝えしていきます!各企画に割り当てられたプレゼン時間は6分間、審査員による質疑応答が10分間、計16分間で各企画の魅力を伝えていただきました。

エントリーNo.1 「あなたのあたまに宝石を詰めたい」 橘夏香さん

忙しい毎日に、宝石という差し色を。
宝石って何か怪しい?高級品?いいえ、宝石の世界って、もっと自由で奥深いんです。ネットにSNS、せわしく回る世界に息切らすあなたのための、宝石という趣味のお話。

エントリーNo.2 「浪人生、アラスカに住む。」 後藤ゆうさん

ゆうは何しにアラスカへ?
マジか?マジか?の怒涛のラッシュ!いやクラッシュ?
大学全落ちした著者が福島からアラスカに渡り、アメリカの名門大学に合格するまでの型破りな経験を綴った日本初のギャップイヤー本!

エントリーNo.3 「ティラノの手は無限大」 山口大賀さん

「使いまわし」に焦点を当てた進化の本!50以上の生物の進化について、その前後関係に着目した2コマ漫画を用いながら紹介し、進化の無限大の可能性を伝えます。きっとあなたの生物を見る目も変わるはずです。

エントリーNo.4 「18歳、戦死した曾祖父を追う」 牛谷雅さん

残された文書から、時を越えて会いに行く──18歳の若者が曾祖父の戦争体験の調査の過程で抱き始めた、唯一無二の家族愛を綴ったエッセイ。戦後80年が近づく今、戦争継承の少し新しい形を追体験してみませんか?

エントリーNo.5 「帰国子女物語」 ひとみさん

小学生で日本を飛び出し、長い年月を海外で過ごしたからこそ書ける等身大の留学日記。大人には分からない、子供ならではの事情・常識などここでしか得られない情報が満載!留学を考える全ての人の背中を押す企画。

エントリーNo.6 「社会は『妥協』によってつくられる」小林寛さん

一見ネガティブな「妥協」という現象を、社会科学のキーワードとエンタメ作品を通じて解説します。政治や経済への理解を深めるだけでなく、仕事上の交渉や調整、日常生活にも役立つ視点を提供する企画です。

エントリーNo.7 「ガリレオならどうやってごみを捨てるだろう」 柿沼皓輝さん

数式だらけでよく分からない。でも数式も含めて理解したい。そんな人に送る全く新しい入門書。身近な現象から宇宙まで、さあ紙とペンを持って計算しよう!

トークショー

企画者の皆さんによる熱いプレゼンの後は、三浦しをんさんによるトークショーです。
今回のレポートでは、トークショーの中から印象的なお話をピックアップしてご紹介したいと思います。

Q. 三浦さんが学生時代に手にとって印象に残った本、その後の自分に影響を与えている本はありますか?

A. 学生時代だと中井英夫さんの『虚無への供物』(講談社)という小説がとても好きで、中井さんの本を色々読んでいましたね。あとは、漫画喫茶に行ってずっと漫画を読んでました。
ノンフィクション系もすごく好きでした。戦争関連のノンフィクションには優れたものが色々あるので、学生時代から結構読んでますね。手薄なのが実用書系で、あまり読んだことがないです。

小説も漫画もノンフィクション系もそうなんですけど、自分だけでは絶対経験できないこと、体感できないことを知り、味わえるっていうのが、いいところかなと思いますね。映画も好きですが、私は映像表現だとスピードが早くて脳の処理が追いつかないときがあって。本だと、自分のペースで読んで、ページを戻ったりできる。まあ映画だって、DVDや配信で見れば戻せますけどね(笑)。本は、映像とか音楽とかに比べて、読むテンポとか受け取るテンポをコントロールしやすいじゃないですか。そこが自分に向いてるんだと思います。

Q. 三浦さんはもともと編集者を志望されていたとのことですが、作家さんにとっていい編集者さんかどうかを決める条件や資質といったものはあるのでしょうか。

A. 今日のプレゼンに対する編集者の方の質問やコメントを聞いてなるほどと思ったのが、小説を編集してる方と全く観点が違うなってことなんですよ。ジャンルによっても全然違うんだなってことが分かったんですが、どういう風にしたら企画を読者により届けられるかとか、この企画書のどこがどう足りないかとか、そういうことをちゃんと分かっていて、それを指摘したり質問したりされていましたよね。

ただ、私が普段書いている小説の場合は、伝えたいことが外側にあるんじゃなくて、作者の心の中で、企画書にしようがないもやっとしたものがあり、それをなんとか文章化して、苦心の末に一冊の小説になる感じなんです。そのため編集者としても、プロットや企画書を提出してくださいとか、ここをこうしたらもっとこの小説はたくさんの読者に届きますよとかを、非常に言いにくい。小説には「正解の形」がないというか、作者も編集者も「正解」を明確に提示できないからかなと思います。

そうはいっても本は商品なので、読者の方に読んでいただかないことにはしょうがない。そこで編集者は、装丁をどういう風にしたらいいかとか、タイトルは本当にこれでいいのかとか、内容に興味を持ってもらえるような帯の売り文句はどうしたらいいのかとか、ものすごく色々考えてくれます。もちろん中身の文章についても、「ここはちょっとわかりにくくて、読者に伝わらないかもしれないですよ」といった指摘もしなきゃいけないですし。それはノンフィクション系だったり実用書系の編集者も同じだと思いますが、当初の企画書みたいなものが小説にはないことが多い。そこは作者すら明確に把握しきれていない、内面に関する領域なので、もう書き手におまかせっていうパターンが多いと思いますね。どんな作品が仕上がってくるかわからないので、小説の編集者は度胸が必要かもしれません。

小説に限らずどんなジャンルにおいても、本を書いてる人って繊細な部分があるし、著者名を出して本を出すとなったら、当然いろんな批判もあるから、それに対してある程度のメンタルの強さも必要だし、その間でいつも揺れ動いてる存在です。この原稿は本当に面白いのかなって、書いていて不安になることもあるでしょう。それをうまく支えなきゃいけないので、編集者は無神経だと絶対にできないです。ただ、揺らいでいる書き手に巻き込まれたら共倒れになってしまうから、あえて何も気づいていないふりで、ドーンとかまえていなきゃいけないときもある。実務的にも精神的にも、いろんな面が要求されて、編集者は難しいお仕事だなと思いますね。

Q. 小説家という作家の観点から、今後出版はどうなっていくのか、三浦さんの未来予測をお聞かせください。

A. 町の本屋さんがなくなってしまってるのは本当に問題だと思っています。これから高齢化も進んでいきますが、散歩がてら駅前の本屋さんで週刊誌を買って帰るみたいなおじいちゃんおばあちゃんを、書店でバイトしていた時によく見てきました。気軽にふらりと立ち寄れる本屋さんがなくなってしまうと、「あ、こんな本が出てる!」という発見も、本や雑誌を読む習慣自体もなくなってしまうので、生活がつまらなくなりますよね。
ただ、年間出版冊数が8万点というのは、多すぎる気がするのも事実です。本屋さんだって、入荷しても棚に並べきれないと思います。
これは出版社と我々書き手が考えなければいけない問題で、もう少し刊行点数を絞っても業界が成り立つよう、いかに出版物のクオリティを高めるかということだと思います。本というのは、本来的にそこまでバカ売れするものではなく、本好きなひとが手に取ってくれるから成立してきたものです。百万部を狙うのではなく、一人でもいいから誰かの心に本当に深く届くような、質の高い本を丁寧に作って届ける。それがいいんじゃないかなと思いますね。出版界の適正規模を探るというのは、書店さんや読者の方たちのためにも、出版社や書き手のみんなで考えていかなくちゃいけないことだと思いますね。

結果発表

トークショーも終わり、とうとうプレゼンの結果発表となります。審査員と観客の皆様による投票で決まるグランプリ、準グランプリ、3位企画、そしてゲストの三浦さんから贈られるゲスト賞が発表されます。

ゲスト賞を受賞したのは
エントリーNo.2 後藤ゆうさんの企画 「浪人生、アラスカに住む」 です

後藤さんには賞状と、副賞として三浦しをん様のご著作である『風が強く吹いている』が贈られました。

3位に選ばれたのは
エントリーNo.6 小林寛さんによる「社会は『妥協』によってつくられる」です 

小林さんには副賞として、ボールペンが贈られました。

準グランプリを受賞したのは
エントリーNo.4 牛谷雅さんの企画 「18歳、戦死した曽祖父を追う」です。

牛谷さんには副賞として、ボールペンが贈られました。

そして、見事栄えあるグランプリを受賞したのは
エントリーNo.3  山口大賀さんによる「ティラノの手は無限大」です!

山口さんには副賞として、ボールペンとトロフィーが贈られました。

受賞された後藤ゆうさん、小林寛さん、牛谷雅さん、山口大賀さん、おめでとうございます!!

そして、素晴らしい企画の数々を見せてくださった7名の企画者の皆様、熱いプレゼンを届けてくださりありがとうございました!

第20回出版甲子園に応募くださった企画の数々は、現在出版に向けて着々と歩みを進めています!
実際に書店の本棚に並ぶ日が待ち遠しいですね!

また、現在出版甲子園では、第21回出版甲子園の企画募集を開始しております!
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