第21回出版甲子園 優秀企画紹介⑥『君を待つ路上景観』

 こんにちは!私たちは、学生による商業出版を支援する、早稲田大学公認インカレサークル「出版甲子園実行委員会」です。

 私たちが運営する出版甲子園では、毎年全国の学生から本にしたい企画を募集し、最終的には数十名の編集者・書店員によるプレゼン審査を通じて商業出版オファーの獲得を目指しています。2025/12/14(日)に開催される決勝大会では3回の団体内審査を勝ち進んだ7企画が自身の企画を紹介。京極夏彦先生と朝霧カフカ先生のトークショーも必見です!

 決勝大会の詳細はこちらのページからご確認ください!

 そして今回の記事では、第21回出版甲子園の決勝大会に進出した企画『君を待つ路上景観』をご紹介します!

企画紹介

【企画名】

『君を待つ路上景観』

【企画概要】

「路上景観」と聞いて、何を思い浮かべますか?
犬のフン持ち帰り啓発看板、交通安全標語、飛び出し坊や、遊具……。上げていけばきりがない。けれど、それに気づいている人は、あまりに少ない。
本書は、そんなユニークで愛すべき「路上景観」の数々を、ポップに紹介します。これを読めば、あなたのいつも歩いていた道が、散歩道に変わること間違いなし! 散歩は飽きる?いえいえ、路上景観に限りはありません。もしかしたら発見したその看板の違和感、その面白さに気づいているのは、まだあなただけかもしれません。
さらに、「路上景観」が持つ隠された社会や生活との接続にも迫ります。
さあ、楽しい発見に満ちた路上へ、一歩踏み出してみませんか?

【目次案】

序章

第一章 健康で安全な生活
#1 飛び出し坊やは飛び出さない
#2 飛び出し坊やの黒幕
#3 「健康で安全な生活」??簡単に実現してたまるか

第二章 身近な人々との接し方
#1 境界マークは、黙って君のことを見つめている
#2 路上景観に、君の力で命を宿そう
#3 路上景観の奥の誰かに、救われた!

第三章 地域への愛着
#1 筆者の地元川崎は、やっぱり治安が悪くて、それだから良い
#2 鹿児島県民が絶対に守りたい、「西郷どん」
#3 日本各地で見つけた、「地域への愛着」

●路上景観は、地域の人が、地域の人に「メッセージを送る」ために、設置するものだ。となると、不可分になってくるのは、「地域への愛着」である。本章では、路上景観「地域性」「地域愛」が表れた以下のような事例から、「地域の愛着」について考察していく。

◯川崎では、「治安が悪い」というパブリックイメージの通り、「いつまでもきれいな町に住みたいな」という看板が、落書きだらけになっている。看板一つきれいに守れない町で、その願いは通じないだろう。でも、別の看板では、「川崎で光る あなたの交通マナー」と書かれていた。「普通の交通マナー」が、治安の悪い川崎では、相対的に光り出すのだ。そんなポジティブシンキングから、地域愛というのは芽生えるのかもしれない。(#1)

◯従来は「有名人になりきる」ものであるはずの、顔はめパネル。しかし、鹿児島県の顔はめパネルでは、最強の有名人「西郷どん」になりきることは許されない。なりきる対象は、名も無きおじさんや犬、温泉卵にまで及ぶが、やはり西郷どんにはなりきることができない。そんな、鹿児島県の顔はめパネルには、やはり、県民の「西郷どん」への強いリスペクトが表れているのだろうか。(#2)

◯島根県では、「しまね」のあいうえお作文として、「しんごうまもろうね」と書かれている。いくらなんでも強引に思えるが、そこまでして「地域愛」にこだわりたい理由があるのだろう。そんな、地域愛が滲み出る路上景観の数々から、さらに「地域への愛着」を考える。(#3)

第四章 公共の意識とマナー
#1 マナー看板にこそ、「マナー違反」が見え隠れする
#2 看板界のスター、スコップを片手に
#3 そんなに堂々と自己申告されても困るのです

第五章 生産と消費
#1 消費:まずは、街中の地域景観を観察してみよう
#2 消費して生産:勇気を出して突っ込んでみよう
#3 生産:勝手にドラマを作ってみよう

第六章 情報と交流
#1 看板界のスポークスマン
#2 「しない させない “許さない”」←させちゃってるな
#3 学術的視点を取り込めば、議論が分厚くなると聞いたから

第七章 身近な自然との触れ合い
#1 照れる犬、全国に感染中!
#2 嘆く犬は、私のことを嘆かずに受け止めてくれるだろうか
#3 いつになったら犬の看板に飽きるのだろう

第八章 時間と季節
#1 路上景観だけは、時間を刻み込んでいる
#2 読めなくなった路上景観
#3 「読めなくなった路上景観」を、救いにいこう

第九章 遊びの工夫
#1 遊具化の「穴」を衝いて遊べ
#2 顔はめパネルの「穴」を衝いて遊べ
#3 まだまだ、「穴」を衝いて遊べ

第十章 成長への喜び
#1 もう対象年齢ではなくなってしまった
#2 ということは、やっと対象年齢になったのかもしれない
#3 初心者マークを外す、その日

第十一章 基本的な生活習慣や生活技能
※全体の総括

終章
ここまでの内容、実は生活科の目次だった!

【企画のウリ】

この企画の最大の魅力は、「名もなき街角」を主役に据えたところにあります。
多くの散歩本が名所や観光地を案内するのに対し、本書は「景色に溶けていたはずのもの」へ光を当て、日常に埋もれていた風景の意味や物語を掘り起こし、新しい発見をもたらしてくれます。
ページを開くと、犬の看板も、飛び出し坊やも、落書きだらけの注意書きも、著者の視点を通すことで、時に必死に、時に可笑しく、驚くほど健気な存在として立ち上がります。
読者はページをめくるたびに、「見落としていた日常の住人たち」と出会い直す楽しさに包まれるでしょう。
さらに、本企画が描く路上景観の読み解きは、単なる観察記にとどまりません。
それらを地域からの「ささやかなメッセージ」として捉え直すことで、街に潜むユーモアや誇り、生活の手触りまでも掬い上げていきます。
そして終章では、この旅が 「生活科」という学びの原点へ回帰していく構成が明かされ、散歩・観察・地域・教育という幅広いテーマに、新たな視点を提供します。
こうした仕掛けによって本企画は、忘れていた観察の喜びを呼び覚まし、街を歩くというささやかな行為に、もう一度ワクワクを取り戻させる一冊となります。
情報があふれる現代社会にあっても、目の前の世界を愛おしく思う力をそっと育て、読者に新しい「日常の想像力」をもたらす。
そんな温かくノスタルジックな温度感と気づきが、本企画ならではの魅力です。

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