【大盛況の中閉幕】第21回出版甲子園 決勝大会レポート
2025年12月14日(日)、第21回出版甲子園決勝大会が早稲田大学大隈記念講堂小講堂にて開催されました。
今回集結したのは3度の団体内審査を勝ち抜いた全7企画7名の企画者たち。出版を目指す学生の真摯な思いのこもったプレゼンの様子を少しだけお届けします!
また、今大会のゲストは小説家の京極夏彦先生、漫画原作者の朝霧カフカ先生。 『文豪ストレイドッグス』を通じて関わりのあるお二人の貴重なお話に、会場は大いに盛り上がりました。
学生企画者たちのプレゼンテーション
決勝に残った全7企画の企画者は、自身の企画の良さを審査員に伝える6分間のプレゼンテーションを行います。その後の審査員からの10分間の質疑応答で、企画に興味を持った編集者からの深堀りの質問やアドバイスをいただきます。そして、全審査員の点数の合計でグランプリと準グランプリが決定!グランプリの企画者には賞金10万円が授与されます。
今回集結した精鋭7企画は次の通り。それぞれの企画者さんが審査員と観客に向け、自らの本を通して伝えたい思いをプレゼンしました。
中川天翔 『現役東大生ファイター、リングの上で「孤独」を知る。』
格闘経験者かつ東大生の知見から、孤独をポジティブに捉え武器にすることを提案する企画です。孤独をポジティブに捉えるという新たな視点に会場はハッとさせられていました。


三宅智也 『うまく話せなかった僕が、声を武器にするまで』
吃音を乗り越えた経験を伝え、自己表現に悩む人の背中を押す企画です。プレゼンから彼自身のこれまでの努力が感じられ、観客も思わず聞き入っていました。


藥師功哉 『ミジンコ食べたらどんな味!?』
ミジンコ愛強めな“研究者の卵”のそばで過ごしてわかった、ミジンコの魅力を伝える企画です!ステージ上には藥師さんが透明ケースに入ったミジンコと一緒に登場。また、会場にいらしていたミジンコガール八田桃子さんに藥師さんが話しかける場面も!お二人の関係が審査員にツッコまれ、この日一番の笑いが起きました。


目黒花織 『600日の探究論』
高校の探究活動で文部科学大臣賞等の素晴らしい成果を残した自身のメソッドを全て伝える企画です!彼女のプレゼンの話し方・構成の全てが流石の腕前、審査員からのお褒めの言葉 が止まりませんでした。


森花菜 『熱帯魚の赤ちゃん「豆チョウ」採集Guidebook 〜 近くの海で出会えるキセキ 〜』
誰もが目にしたことのある黄色と黒の小さな魚、「豆チョウ」の魅力を写真や図説たっぷりで紹介する企画です。森さんは豆チョウ採集時の装備であるスイムウェアとシュノーケルを着用して登場。可愛い豆チョウの写真や絵に会場が癒されていました。


武田壮太 『君を待つ路上景観』
路上の面白さに気づくことを学びの視点まで取り入れてお勧めする企画です。誰もが一度は見たことがあるであろう路上のシュールで面白い事例の数々に、会場のあちこちから笑いが漏れていました。


⑦田中秋徳『特別支援学級から東大へ』
タイトル通りの経歴を持つ企画者さんによる、社会通念的な人生観を問い直す企画です。彼の異色の経歴に興味津々の会場。筋道立った企画の意義の伝わるプレゼンに感じ入っていました。


また、各プレゼン後に観客の皆様には、0点「本を買うほどではない」から10点「本を買い たい」までの10点満点で審査を行っていただきました。最も点数が高かった企画には観客賞が贈られます。その結果は最後に発表!
京極夏彦×朝霧カフカトークショー
今大会のスペシャルゲストは、小説家の京極夏彦先生と漫画原作者の朝霧カフカ先生。朝霧先生が原作を担当されている漫画『文豪ストレイドッグス』の外伝に京極先生が登場していらっしゃることから実現した、夢のトークショーです。
壇上に現れた京極先生の和服姿と朝霧先生のマスク姿の貫禄に、会場が圧倒されました。トークショーでは、事前に募集したファンの皆様からのご質問にお答えしました。
「先生方の文章内に出てくるような格好良くて素敵な言葉はどこで知るのか、また文章力をどう上げるのか」という質問に、
朝霧先生は、「もともとかっこいい文章や言い回しが好きで、映画や漫画・小説からかっこいい言い回しを見つけるのは最高だなという気持ちがあります。なので、それを取り出してくっつけたりして出させていただいている。自分に刺さるものをたくさん見るっていうのが一つのインプットの仕方かなと思うんです。」と回答。『文豪ストレイドッグス』の1話で
太宰が言う「扨(さて)」が漢字表記なのは京極先生の小説から取った、という情報もここで初出ししてくださいました。
京極先生は「小説は何十万人という人に読んでもらうために書かれるものですから、自分が かっこいいと思わなくても、人がかっこいいと思うものも拾うべきなんですね。そうすると、その辺に転がっている言葉をきちんと拾うようにしておかないと、語彙が増えないんです。」とご回答に。さらに、「かっこよさは漢字の字面の場合もあれば音の場合もあるため、本を『読む』だけでなく音にも注目しなければいけない」「リズムが良い文章と悪い文 章では、いい文章の方がかっこよく思われがちではある」「漢字とひらがなの割合や、1行のページの中の割り付けなどによって、大したことない普通の言葉がかっこよくなる」な ど、ご自身の体験を惜しみなく披露。
「どこまで気を配れるかという問題もあるし、やっぱり自分が心地よいものを書いているだけでは、こういう商売はできないのだなって。もう30年もやってるんですよ。いい加減にしてほしいですよね。それでもまだなかなか得心することはできないし、日々勉強ですね。 それしかないですね。」と、会場を和ませながらも、自らの作品の質を追求する姿勢をひしひしと感じさせるお話をしてくださいました。

朝霧先生は「作家という人間に2種類おりまして。1種類は皆さんを楽しませたいとか、皆さんに笑顔になってほしいとか、皆さんの人生をいいものにしたいっていうポジティブなエネルギーを放って作家をする人間っていうのがいる一方で、僕はそうではなくて。
僕はね、皆さんに花束を贈ったりとか美しいものを見せたりしようと思ってないんですよ。 どっちかっていうと、僕の作家としてのスタンスは、皆さんに斧を投げようと思ってるんで す。 斧を投げつけて、皆さんの頭をかち割って頭蓋骨をぶち割るのが楽しみで、それを楽しみに作家をしています。例えば『もうこの作品がないと人生生きていけない』とか、
『この作品のせいで人生が変わった』とかいうような、ちょっと破壊的なことを皆さんに届けたいと思って作品を書いている節はあります。 それが僕の脱サラした意味ですね。僕はサラリーマンだったんですけど、サラリーマンを辞めたのはやっぱり斧を投げたいというようなモチベーションがあって。
実際にそういう言葉をいただくために、『しめしめ』と、『変えてやったぞ』というような、暗い気持ちで作品を作っております。 なぜか斧を投げつけられて頭を割られた人は割と感謝するんですよね。普通は怒るんですけど、物理的なものじゃないんで。『ああ、これで人生を変えていただいた』というふうに言うので、それも楽しかったりしてですね。その ようなタイプの作家であるということをご留意した上で、楽しんでいただければと思います。」とご回答。
京極先生はそれに対し「なかなか素敵なモチベーションですね。」と笑いながら、 「僕の場合はギャラですかね。仕事なのでモチベーションが関係してちゃ、まずいと思うんだよね。僕も元々サラリーマンですから、受けた仕事はギャラの分だけはきちんと締め切りを守ってやるのが当たり前じゃないですか。 」とお答えに。
そしてどれだけ読者に届いたかのバロメーターである部数は大事であるそう。自己表現をしたいと思ったことがほとんどなく、自身を書籍という商品を作る出版社のスタッフの一人に 過ぎないと思っているため、チームで最終的にパッケージ化したものがどれだけ好評かというところにしか興味がない、ビジネスとして上手くいっているかどうかの方が面白い、とい う考え方をお話しくださいました。
最後に、弊団体の理念に関わる「学生が学生の手で出版する意義」について、お二人に伺いました。
私たち「出版甲子園実行委員会」は、学生団体として同じ学生の商業出版を支援しています。先生方の目にはこのような取り組みはどのように映るのか、また、学生だからこそ生み出せる強み、もしくは弱みについてお聞きしました。
朝霧先生は、近年SNSや電子出版などたくさんの表現媒体が発生していることで、本の権威付けを再解釈しないといけないと考えていらっしゃるとのこと。「本ならではのもの、あるいは、本という長い文章からどうやって出版というものを捉えるかというのは、皆さんの
才能やアイデアに期待させていただきたいなと思っているところです。」と、これからの出版に関わる若い世代への期待を寄せました。
京極先生は、「素晴らしいことだと思いますね。人類最大の発明というのは言葉なんですね。その言葉を有効に使うためのツールとしてもたらされたのが文字なんです。その文字を拡散し、きちんと使うために磨かれた技術が印刷です。 そして、印刷というテクノロジーを格段に素晴らしいものに押し上げたものが書籍、本なんです。なので、本は人類の宝のようなものなんです。」と熱弁。
さらにその出版は30年間以上「不況」と言われ続けていることから、その不況は経済構造としての不況でなく、構造上の問題であると考えていらっしゃるそう。「だからこそ、常にワークフローや流通も含めた形での新しいものを作っていかなければ、この人類の宝が埋もれてしまうんです。そこまで見越して何か考えるということをしていただきたい。 若いですからね。若い人が真剣にそういうことに取り組むというのは、我々人類にとっても良いことだと思います。人類と出版業界を救ってください。」と、壮大さに背筋が伸びる激励の言葉をいただきました。
時折笑いを巻き起こしながらも、創作や出版への真摯な思いが伝わってくるお二人のお話に、会場全体が引き込まれました。京極先生、朝霧先生、含蓄のあるお話をありがとうございました。
トークショー後には、お二人のサイン入りの『文豪ストレイドッグス外伝 綾辻行人VS.京極夏彦』の抽選会を行いました。当選者5名の方にはお二方から壇上で直接サイン本を贈呈していただきました。
緊張の結果発表
トークショーを終えて審査も完了し、いよいよ緊張の結果発表。
出版業界最前線を走る審査員に最も認められた証、グランプリの称号は誰の手に渡るのでしょうか。
まずは観客から最も「買いたい」と思われた企画に贈られる観客賞から。 観客賞に輝いたのは・・・
Entry No.3 藥師功哉 『ミジンコ食べたらどんな味!?』!
ミジンコの魅力、それを研究するミジンコガールの奇想天外な姿をユーモアたっぷりに語る企画とプレゼンが観客の心を掴みました!
藥師さんには賞状と、京極先生サイン入りの『姑獲鳥の夏』、朝霧先生サイン入りの『文豪 ストレイドッグス1巻』が贈られます。
続いて審査員の審査による準グランプリの発表です。
準グランプリに選ばれたのは・・・
Entry No.4 目黒花織 『600日の探究論』!
近年注目や需要の集まる探究活動について「大成功した学生」の立場から語る本企画に、審査員の皆様は無限の可能性を見出していました。
目黒さんには、賞状とトロフィーが贈られます。
いよいよ栄えあるグランプリの発表です。
グランプリを勝ち取ったのは・・・
Entry No.5 森花菜 『熱帯魚の赤ちゃん「豆チョウ」採集Guidebook 〜 近くの海で出会え るキセキ 〜』!
本企画をきっかけに、豆チョウがクラゲやクマノミに続く新たな海の人気者になることでしょう。
森さんには賞状とトロフィー、そして賞金10万円が贈られます。
おわりに
ご来場いただいた皆様ならびにYouTube配信をご覧いただいた皆様、誠にありがとうございました。
学生の力で出版業界を盛り上げようと学生である団体員・企画者が力を尽くした今大会。SNSやAIの隆盛の中、社会に伝えたいことを本という形で、自分にしかできないやり方で表現しようとする企画者の皆様の熱意に、何か心に感じるものがありましたら幸いです。
今大会の企画は着実に出版へと歩みを進めています。皆様に審査いただいた企画を書店で見かける日も、そう遠くないかもしれません。ぜひ楽しみにお待ちください!
また、第22回出版甲子園の開催も決定しております!企画募集は2026年春ごろを予定。自分にしか書けない本を目指して一歩踏み出してみませんか?
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