「“学生”の私が本を書けたワケ」~面白いと思ったこと、伝えたいことを世界に発信する~ 篠原かをりさんインタビュー

学生商業出版コンテスト「出版甲子園」。独自の視点を持つ学生たちが、実行委員と企画のブラッシュアップを重ねて商業出版を目指す。今回は大会への応募を検討している学生に向けて、第10回大会でグランプリを獲得した『恋する昆虫図鑑 ムシとヒトの恋愛戦略』を出版した、篠原かをりさんから話を聞いた。(取材:広報局 河原広大、河野日奈)

―出版甲子園に応募したきっかけを教えてください。

 大学時代にクイズ研究会に所属していたのですが、クイズ大会を行っていた場所の別の部屋で出版甲子園の決勝大会が行われており、その時に出版甲子園の運営をしていた知り合いに偶然会って、その存在を知りました。私は中高で文芸部に所属していて、本を出版することが夢だったので、翌年に応募しました。

―企画応募にあたり苦労したこと、印象に残っていることを教えてください。

 虫が好きで、本を書くのであれば虫について書こうと思っていました。現在は学者という肩書きで研究などをしていますが、当時はまだ「虫が好きだ」というだけで、学者ではない大学生が本を出すとしたらどのようなものになるか、また、研究者ではない立場で書くとしたらどうするか、ということを考えるのが一番難しかったと思います。

↑大量のハチとふれあう篠原さん

―虫と恋愛を組み合わせて本を執筆されたのはなぜでしょうか。

 執筆当時の風潮として、若手の女性ライターの方は恋愛コンテンツを扱っていることが多かったので、そのようなものが求められているのかなと分析して選びました。これまで虫に縁がなかった人にも読んでほしいとも思いましたし、また昆虫は交尾にかける熱量が高く、そのような特徴を生かしたかったという点もあります。

―書籍化に向けての執筆段階で苦労したこと・印象に残っていることは何でしょうか。

 虫に関係するイベントや、昆虫採集が一番盛んに行われている季節である夏に本を出版したいと考えていましたが、途中で体調を崩してしまいました。それでも「絶対に本を出したい!」という一心で入院中に点滴を受けながらも最後まで書き上げることができました。そのことが一番印象に残っています。

―出版甲子園を通じて本を出版したことが、人生に与えた影響はどのようなものでしたか。

 出版甲子園で本を出版して以来、継続して本を出し続けています。初めて本を出版することのハードルが非常に高い中で、早い時期に出版の実績を作れたことが、作家としてのキャリアを切り拓く大きな転機となり、人生の方向性が決まりました。

↑学位記を手に記念撮影する篠原さん

―弊団体の「担当者制度」についてはどう思われましたか。

 とても助かりました。オファーをしてくださった出版社様にも一緒に出向いてくれましたし、企画書の内容も一緒に練ってくれました。実際の読者視点でのアドバイスもとても参考になりました。決勝大会では就活生や大学院生といった社会との接点が多い参加者もいたのですが、19歳だった私はひと際若く知らないことも多かったので実際に出版社を回る時など、担当者の方がいなかったらどうなっていたかわからないと思うほど心強い存在でした。

―最後に、出版甲子園への応募を検討している人へのメッセージをお願いします。

 自分が面白いと思ったこと、伝えたいことを世界に向けて発信することが本を出すということだと思っています。応募した時点で、その想いが自分のものだけではなくなり、誰かと分かち合うことがスタートします。それだけでも、意味のあるものだと思います。なので、ハードルを作る行為を一旦無視して、まずは応募してみるといいんじゃないかと思います。

篠原かをり(しのはら かをり)

作家、文化昆虫学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員。

1995年神奈川県生まれ。幼少期より多様な生き物を飼育・研究する無類の生物好き。

大学在学中、第10回「出版甲子園」でグランプリを獲得した『恋する昆虫図鑑 ムシとヒトの恋愛戦略』(文藝春秋)で作家デビュー。

メディア出演も多数手掛け、TBS『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターや、日本テレビ『嗚呼!!みんなの動物園』の動物調査員など多方面で活躍。  近著にエッセイ集『地図はない、目的地もない、でも迷子ではない』(NHK出版)や、初の本格児童書『コボックとふしぎな虫の樹』(双葉社)などがある。

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