【本を出版したい人必見!!大ヒット『JK、インドで常識ぶっ壊される』の熊谷はるかさんに聞く企画の極意】

 6/25 (日) に締め切りの迫る第19回出版甲子園企画募集に向けて、第16回大会グランプリを受賞した『JK、インドで常識ぶっ壊される』(河出書房新社)の著者・熊谷はるかさんにお話を伺いました。

 企画応募から決勝大会までの体験談や、「エッセイを書くこと」について盛り沢山の内容をお届け!中学3年生から高校3年生の6月までをインドで過ごし、「光と影」の両方を瑞々しく書き綴った熊谷さん。ご自身の経験をどのように企画書、そして本に落とし込んでいったのか必見です。
(聞き手:出版甲子園実行委員会編集局員)


編集局員(以下、編):まず、熊谷さんが現在大学で勉強していることや、大学での生活について教えてください。『JK、インドで常識ぶっ壊される』の中で、「自分は何のために学校に行くのだろうか。何のために、誰のために大学に行くのだろうか。」という自問自答が繰り返し出てきたと思います。そういったことを踏まえて、いかかですか?

熊谷さん(以下、熊谷):私は9月からアメリカの大学に通い始めて、1年生がもうすぐ終わるところなのですが、アメリカの大学は日本の大学とシステムが違っていて、最初に専攻を決めずに入学するんです。だから、自分の興味を持った科目だったら何でも自由に選択することができます。それを活かして、文学や社会学、データを使った分析や経済など、幅広く勉強しています。
 専攻を決めるのは2年生の終わりなので、それに向けて、本当に自分のやりたいこと・自分が意味を見出せることは何だろうかと、模索している最中です。


編:特に印象に残った授業や分野はありますか?

熊谷:アメリカの大学でも、意外と日本についての授業が多いんです。日本の歴史や語学を扱う授業があって、それを受ける中で、日本にいたとき以上に、海外に来てから日本について深く考える機会が増えたことが自分の中で驚きでした。
 様々な国籍やバックグラウンドを持つ人たちが集まっている場所で、色々な意見を聞きつつ、日本人として、日本にいる時に感じたことと両方合わせて考えるのが面白いなと思っています。


編:なるほど、複数的な視点で日本を見る機会が増えたのですね。ここからは、熊谷さんの、企画応募から決勝大会までを振り返っていきたいと思います。まず、企画応募の準備にはどれくらいの時間を割きましたか?

熊谷:一次審査への応募は、本当にギリギリでした。締め切り前日に出版甲子園を見つけて、その時その場で書けることを一日で書いて提出しました。それもあって、二次審査、三次審査に向けて直さなければいけないことや改善すべきことが沢山ありました。
 一次審査を通過してからは、2、3か月みっちりと企画を練っていきました。最終的に決勝大会で審査員の方々の前でプレゼンをする直前には、週に2、3回以上は担当者の方とZoomで打ち合わせをして、企画書を書き直して、を繰り返していました。


編:一次審査時点の企画書は締め切り直前に急いで仕上げたということですが、今まで企画書を書いた経験はありましたか? ハードルは感じませんでしたか?

熊谷:企画書を書いた経験は全くありませんでした。そもそも本の企画書がどういうものかもあまり分かっておらず、本当に手探りでの作成でした。難しいというよりは、何が正解かもわからなかったので、自分なりにわかる範囲で書いていきました。
 ただ、わからないなりに自分が一番伝えたいことは何なのか、本になった時に一番魅力になることは何だろうかということは念頭に置いて作っていたと思います。


編:本を出したいと思ったときに、出版甲子園以外の大会に応募することは考えなかったのですか?

熊谷:学生であり、本を書いた経験が全くない立場から出版するには、出版社に原稿を持ち込んだり、新人賞に応募したりするというルートがあると思うのですが、小説ではない作品を受け付けているものがなかなか無く、そんな中で見つけたのが出版甲子園でした。検索して一番初めに出てきたのが出版甲子園だったという理由もあります。


【エッセイのタネは日々の生活に転がっている】

編:熊谷さんの一次審査と二次審査の企画書を比較したとき、 章立ての内容がとても具体的になっていましたが、エッセイに書くネタの掘り下げはどのように行っていましたか?インドに住んでいた頃から、日記やSNSに書き溜めたりしていたのですか?

熊谷:日記のようなものはつけていましたが、事細かに日常のエピソードを書いていたわけではありませんでした。企画書を書いていたときは日本にいたので、日常の中から、「これ、インドにいる時はどうしてたっけ?」というように、日本での普段の生活とインドでの生活の違いや共通点を考えていました。
 すごく大きくて特別なことを考えるというより、普段生活している中で経験したことを本にしたかったので、ヒントは毎日生活している中にあったんじゃないかなと思っています。

 インドでは毎日が驚きに満ちていて、書き留めておかなくても自分の記憶の中に強く残っていることがたくさんあったので、その中から選び抜いたものが本になっています。


編:出版甲子園には、二次審査を通過した企画に団体員が数名つき、企画のブラッシュアップや出版社とのやり取りをサポートする担当者制度があります。
 熊谷さんが経験したことを、インドにあまり馴染みがない読者に伝えるための文章にしていく中で、担当者はどのような存在でしたか?

熊谷:私にとっては担当者さんの存在がすごく大きくて、2人でこの本を作り上げたといっても過言ではないと思っています。この本はもちろん私の経験を書いたものなのですが、自分とは違う立場の人や自分が生まれ育った場所ではない国、つまり、他者について書いている部分がすごく多いので、独りよがりな視点にしてしまうと、読者にあまり共感してもらえないと考えました。

 自分のことを書いているけれど、なるべく自分以外の色々な人に響く書き方や視点は何だろうと、担当者さんとはバランスについて試行錯誤しました。
 この本はタイトルに「JK」とありますが、担当者さんとは年齢が近かったということもあって、いわゆる若者の視点からどう伝えていくかの相談もよくしていました。自分と年齢の近い層を読者として想定していたので、どういう語り口が受け入れられやすいかということも話し合いを重ねて考えていきました。


編:三次審査は企画書だけでなくプレゼンがあったと思うのですが、一次・二次審査と比べて難しかったことや工夫したことありますか?

熊谷:私はもともと人前で話すのがあまり得意ではなく、一次・二次審査と比べてものすごく緊張していたのを覚えています。さらに、他の企画者の方々が皆さん年上で、大学生や大学院生が多く、不安は大きかったです。でも、担当者さんに何回もZoomで練習に付き合ってもらったおかげで、万全の態勢で本番に臨めました。また、オンラインだったからということもあるのですが、自分の緊張や不安を見せないように意識していました。


編:決勝大会では審査員や観客に向けてのプレゼンを行いますが、自分の企画の魅力を伝えるために工夫したことはありますか?

熊谷:これは企画書にも通じることだと思うのですが、まず注目してもらう事が大切だという風に思っていました。やはり自分は出場者の中では最年少の女子高校生であることが本の企画としての魅力や特徴に繋がる要素だったので、それをなるべく見せられるようにしていこうと思いました。本の魅力の一部として自分を売り出していくつもりで、自分の強みや他の人と差別化できる点をプレゼンでも前面に出していけるような工夫をしていました。

【大切なのは、特別さと平凡さのバランス】

【魅力的なエッセイについて生き生きと語る熊谷さん】

編:毎年出版甲子園には多くのエッセイの企画が持ち込まれているのですが、ズバリ、魅力的なエッセイとは?

熊谷:重要なのは、特別さと平凡さのバランスです。本というものは、なるべく多くの人に読んでもらいたいがために世に出すものです。そのために、読者の人に響く平凡さ、色々な人が共感できる点と、自分にしか書けないこと―自分だけの言葉遣い、自分じゃないと作り出せないもの、特別さ―は何だろうと、その両方を突き詰めていくことが大切なのではないかと思います。

 私がエッセイについて話す時によくあげているのが、朝井リョウさんです。朝井さんのエッセイは、一見すごく普通なことを書いているように見えて、物事に対するツッコミや分析の視点とそれを表現する方法が独特で、「特別さと平凡さ」のバランスがとても上手く調節されていると思います。このバランスが上手くいっていると、読者に楽しんで読んでもらえるのではないでしょうか。


編:最後になりますが、第19回出版甲子園企画書募集の締め切りまで1ヶ月を切りました。本を出してみたいという人たちに向けて、アドバイスをお願いします。

熊谷:本を出すというのは、全く経験がない立場からするとすごく大きなことのように感じると思いますが、やっぱり一番大事なのは、「なぜ」「何を」「誰に」伝えたいかです。本当にこれを伝えたいという強い意志があれば、言葉に表現した時に必ず表れると思います。言葉にする作業はとても大変だと思うのですが、自分を振り返るという意味でもすごく役に立つ方法でもあるので、恐れず挑戦してみてほしいです。

 また、本屋や図書館に行き、色々な本を見てみるというのが、私にとってすごく役に立ちました。他の人たちがどういう風に書いているのかヒントを得られますし、それを踏まえて、「これは自分にしか書けないことなんだ」と自信を持つことにも繋がると思います。


編:これから企画を応募してくださる方に大変参考になるアドバイスだったと思います。ありがとうございました!

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企画募集は6/25(日)23:59が締め切りです。
学生の皆さんからの応募をお待ちしています!

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