今泉拓氏が考える体操の演技順とABBA方式【行動経済学がパリ五輪を支配する#2】

出版甲子園発『行動経済学が勝敗を支配する』発売記念、第二弾。
今回は、体操競技の演技順について語りました。

1.体操競技の演技順

29日に行われた体操競技男子団体決勝戦で、日本が2大会ぶりに金メダルを獲得した。

予選1位通過の中国に一時は3点以上の点差をつけられるも、最後の種目、鉄棒でついに中国の点数を上回り、大逆転で快挙を成し遂げた。

スポーツアナリストであり行動経済学とスポーツ分析を掛け合わせた研究を行っている今泉拓氏は、体操のような採点競技においては演技順によって有利不利があると語った。

今泉氏の著書「行動経済学が勝敗を支配する」では、採点競技のような順番に評価する場面において、後ろの人が有利になる全体順序バイアスというものがあると述べている。

今回の体操競技では、日本は予選を2位通過したため、予選で1位だった中国と同じローテーションで回り、各種目の演技順は、日本が先攻、中国が後攻で披露された。この場合、審査員は後ろの人の審査の際、前の人と比較し、良い演技の場合後ろの人により高い点数をつけてしまうため、日本は演技順的に不利であったと言える。

全体順序バイアスによる有利不利を行動経済学的に解消するための方法として、今泉氏はABBA方式を例に挙げた。

2.ABBA方式とは?

ABとはチームのことを表しており、現在の体操の競技順はABAB方式である。つまりAが披露したら次はBが披露するといった形である。一方、ABBA方式は、A、Bの順で披露し、次はB、Aの順で披露するといったもので、A、Bが共に後攻として披露することが可能となる。

ABBA方式は、かつてサッカーのルヴァンカップのPK戦で導入されたことがある。PK戦は先攻の方が有利とされているが、この方式を採用することで、AB両チームが先攻を務めることができる。

今回の体操競技のゆかを例に考えると、この種目では各国3選手が出場し、交互に演技を披露した。ここでABBA方式を取り入れることで、日→中→中→日→日→中という演技順となる。この順番なら、日本だけが先攻を務めて不利になることもなく、かつ最後は中国の選手が後攻となっているため、予選1位通過したアドバンテージにも配慮できている。

スポーツから前述のようなバイアスを除き、より公正な判定でスポーツを楽しめることを今泉氏は期待していた。

『行動経済学が勝敗を支配する』日本実業出版社

著者:今泉拓

東京大学大学院学際情報学府博士課程に所属。認知科学・行動経済学の研究をしている。学部時代からスポーツ分析にも取り組み、行動経済学✕スポーツで第18回出版甲子園準優勝を経験。日本実業出版社より『行動経済学が勝敗を支配する-世界的アスリートも”つい”やってしまう不合理な選択-』を出版。

発売日: 2024/06/14
ISBN:978-4534061102
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