犬猫さっ処分は「当たり前」?世界のアニマルシェルターを通して見えてきた「真実」【既刊本紹介プロジェクト第8弾】

日本の「犬猫さっ処分」という方針は世界基準では当たり前ではない

みなさんは「保健所」と聞いてどんなイメージを持ちますか?犬猫をさっ処分する場所、見捨てられた犬猫たちが集められる、どこか重苦しい雰囲気をまとった場所…。そんなイメージを持つ人が大半だと思います。そして、それは日本において間違いではありません。

しかし、世界的に見て「保健所」(以下、海外の保健所については、本文で使われている「アニマルシェルター」という言葉を使います)に対してそんなイメージを持っている国は珍しいのです。

事実、過去10年かけて、日本はもとより、アメリカやイギリス、スペインなどの8か国の合計25箇所にわたるアニマルシェルターを訪問してきた本庄 萌さんは、世界のアニマルシェルターは「犬猫を生かす場所」だったと語っています。

本庄さんは、海外のアニマルシェルターにはそれぞれ特徴があるとし、

  • アメリカでは豚、ニワトリなどの畜産動物も人と同じように「価値」があるとし、大切にする。動物の「情動」に気を配る
  • ドイツでは、去勢から取り組み、現実的に「殺処分ゼロ」を目指している
  • イギリスでは、「犬猫をもらう場所」ならアニマルシェルター、という認識が浸透しており、可能な限り安楽死させるのではなく、保護して生かす

というふうに語っています

本庄さんは、イギリスに行って、それまでの「ペットショップで犬猫を買うのが当たり前」「保健所(アニマルシェルター)は怖いところ」という価値観が覆されたといいます。

海外では、「アニマルシェルターで動物をもらう」ということは普通で、アニマルシェルターもそのために最適な形で作られていたのです。

重いイメージが付きまとい、それゆえ触れづらい「保健所」。しかし、本庄さんは「多くの人が、気軽に近くのアニマルシェルターに行けるようにしたい」と語ります。

イギリスのアニマルシェルターは明るくて清潔

本庄さんは、イギリスのアニマルシェルターはとても明るくて清潔なところだったと語ります。スタッフはみんなにこにこしており、動物たちもみんなリラックスしていたというのです。

また、動物全般、例えばウサギやモルモットといった小動物まで保護しており、可能な限り安楽死はしないということ。まさに理想的な動物の「保護施設」、「生かすシェルター」がそこにはありました。

日本の保健所の現状と、作者の願い

これまで語ってきたイギリス等と比べて、日本の保健所は動物の「保護施設」としての役割が十分に果たせていないと作者は語ります。また、それは日本の保健所の「余裕のなさ」と人々の「動物問題への無関心」が根にあるとも。

どういうことかというと、まず、日本の保健所も精いっぱいの努力はしているものの、資金面での余裕がなく、1頭1頭が、ストレスなく過ごすためのスペースを与えることができていないというのです。

また、海外とは異なり日本ではチャリティーの文化が根づいていないこともあり、犬猫さっ処分を防ぐための募金を呼び掛けても、なかなかお金が集まらないのです。

本庄さんは、これらの現状を踏まえ、「もっと根深いところに原因があり、そこに働き掛けないとこの問題は解決しない」と語ります。

その根深い原因は「想像力の欠如」、「他者の価値を低く見積もること」だ、と著者は語ります。

「他者の価値を低く見積もる」ということは、誰かを簡単に傷つけることにもつながります。そうならないためにも、「想像力」が欠如しているという現状があるなら、変えていかなければならないのではないでしょうか。

今回はかなり要約してまとめましたが、本作はテーマが重いものにもかかわらず、作品全体が真剣かつ動物への愛にあふれた、温かい雰囲気でまとまっています。各地を回って得た知識が写真付きで描かれているので、『動物愛護』という言葉にひるんでしまう人にも、世界の旅レポとしても読める一冊だと思います。

ぜひ本書を手に取って一度読んでみてください!!

『世界のアニマルシェルターは、 犬や猫を生かす場所だった。』(ダイヤモンド社)

著者:本庄  萌
2017年5月25日
1760円(税込)
ISBN:978-4478066263
https://www.diamond.co.jp/book/9784478066263.html

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