日本にヴァンパイアがいないのはなぜ?【既刊本紹介プロジェクト第6弾】
「呪い」とは?
呪い(のろい)とは、「神秘的手段を用いて特定の個人や社会集団に病気や死などの災厄を生じさせようとする邪悪な行為」を指す。(世界大百科事典第二版)
さて、皆さんは「呪い」についてどのようなイメージをもっていますか?
最近は『呪術廻戦』など、呪いをテーマにした作品が人気になっていたりしますよね。
「呪い」の露出は最近だけでなく、たとえば皆さんが中学生の頃に必ずならう、卑弥呼という女性がいます。弥生時代の争いが絶えなかった頃、邪馬台国という国からある1地方をまとめたといわれている彼女は、現代では、シャーマン(巫女)と呼ばれている呪術師です。
さらには私の好きなマンガの『有閑倶楽部』という作品には、丑三つ時、呪いたい相手の一部をいれた藁人形を釘で打つと呪うことができる、なんて話もありました。
まあ、卑弥呼の時代のことなんて本当か確かめられないし、呪術廻戦も有閑倶楽部もフィクションです。
歴史学者の、作者の妄想かもしれません。
しかし、これらがただの妄想ではなかったら?
私たちの祖先が、本当にその目で見たことを後世のために残そうとしたのだとしたらどうでしょう。
温故知新、なんて言葉もあるように、古きより学ぶことは重要です。嫌いなアイツに呪われないために、その原因や正体を知ることも、もちろん大切です。
『呪いを、科学する』では、さまざまある「呪い」を13個に分類し、それぞれ関連する事象ついて解説しています。
(「外の呪い」:現代、王家、神、離島、異形、自然、災害
「内の呪い」:不浄、憑依、ミクロ、睡眠、幻
「未知の呪い」:偽り)
たとえば、「王家の呪い」では、名門ハプスブルク家を苦しめた不思議に迫ります。16世紀、ヨーロッパを支配するため近親婚を繰り返した一族を襲った呪いとは?
読む前に、「ハプスブルク家」と画像検索をしてみると、さらにおもしろいかもしれません!
知的好奇心をくすぐるような「呪い」
さて、話は変わり、少し前の2月3日あたりに、鬼のお面をかぶったり、その鬼に向かって豆を投げたりした人もいると思います。
おめんを被ったそこのあなた、何色のおめんを被りましたか?
赤色が主流ですが、青色や、緑色、時には黒色の鬼のお面が売られていることがあります。
なぜ、鬼はこんなにカラフルなのでしょうか?
これほどカラフルなキャラクターは、m&m’sか、戦隊モノくらいしか知りません。
『呪いを、科学する』では、「異形の呪い」で、鬼がカラフルなワケを、歴史と医学を重ねた観点から解説しています。
答えが気になる方はぜひ、本書を手に取ってみてください!
さらに、鬼と同じくらい有名な、「吸血鬼(ヴァンパイア)」。
日本であまりその逸話は耳にしませんよね。なぜヨーロッパでは吸血鬼やゾンビが有名になり、日本では有名にならなかったのでしょうか。
その理由も、本書では追求しています。
たとえば一説によると、遺体の埋葬方法の違いが影響していると考えられているそうです。
遺体をそのまま埋める西洋では、何かしらの理由で息を吹き返した人間に恐怖を抱き、ゾンビとして語り継ぐことがあったかもしれません。
そして、このような復活を防ぐために西洋では遺体の口にレンガを詰めて埋めることがあったそうです。その際に口から出血していたり、何らかの体液が付着した遺体を、もし暗闇のなかで見たりしたら、「ヴァンパイアだ!」と叫びたくなるのも、無理はないかもしれません。
これらの現象は、火葬によって遺体を灰にしてしまう文化が発達している日本では起こりえません。
遺体をそのまま埋める西洋方式と、火葬をおこなう日本方式の違いがひとつの逸話を生みだすきっかけになったと考えると、文化的背景から「呪い」を考察するおもしろさがわかると思います。
そして本編だけでなく、コラムにも興味深い話題が掲載されています。
たとえば、「伝説のアザは存在するのか?」、「呪術師の現在地」、「連動する脳と腸」など、呪いから少し離れたトピックについて解説されています。
終わりに
ここまで知的好奇心をくすぐるような「呪い」をいくつかご紹介しました。
『呪いを、科学する』では大学で医学を学びながらオカルトにも通ずる中川さんが選りすぐった「呪い」が他にもたくさん掲載されています。
ぜひ1度お手に取ってみてはいかがでしょうか?
出版甲子園 既刊本紹介第6弾、『呪いを、科学する』でした。
次回は第7弾、『世界最強記憶術 場所法』です。お楽しみに!
『呪いを、科学する』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
著者:中川朝子
2022年7月22日
1210円(税込)
ISBN:978-4-7993-2880-4
https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-2880-4
お読みいただきありがとうございます!
その他の情報はこちらから!